【微ネタバレ】「その女、アレックス」を読んだ。
Tu m'as bien eu!
フランス語で「してやられた!」という意味だそうだ。文中には出てきません。
でも私がフランス人なら、読み終えた後には絶対にそう叫ぶと思う。
「その女、アレックス」はフランスのミステリ作家ピエール・ルメートルの作品だが、ただのミステリじゃない。
ずっとヒントが目の前にぶら下げられているのに、「ああこの次こうなるんだな?」が次々と裏切られていく。
私はこの「裏切り」が大好きで、「裏切り」の強さでその小説が好きかどうかが決まると言っても過言ではない。
ミステリの裏切りは大抵「登場人物への信用」に重きを置かれていると思う。「まさかこの人が犯人だとは…!」ってやつ。
正直それで十分。だってそれでも驚きがすごいし、自分は自分なりに状況を整理してこの人が犯人かな?と思っているその過程すべてが裏切られるのが快感だ。
訳者のあとがきからするとこの作者ルメートルの特徴のようなのだけれど、裏切りは人物への信用に対するものにとどまらない。
なんて言ったらいいんだろう。
話の大筋?流れ?への信用までも裏切っていく。気持ち良いまでに爽快な裏切り。
それでいてずるさがない。
この裏切りを体感して欲しいからあまりネタバレはしたくないんだが、私たち読者はいったい事件がなんなのかがわからなくなってくる。
なんども何度も、「あ、もしかしてそういう流れ?あーはいはい」って感じで軌道修正させられるのにもかかわらず、最後まで軌道修正しきれない。
裏切りだけじゃなくて人物の心理描写もしっかりされていて後から考えるとその心理描写までもが伏線だったりする。何気ないアレックスの仕草も、考えたことも。
そして最後にこう感じる。アレックスにしてやられたって。
ここまで書ききってもう少し書きたくなったので付け加えるが、
この作品のすごいところはアレックスの心の中に置かれている気持ちになってしまうのに、アレックスの心の声の洪水に飲み込まれている感覚になるのに、自分がアレックスにでもなったのかという感覚にまでなるのに、
最後までアレックスに騙され続けてしまうところだ。
この記事を読んだら気をつけるから騙されないよって思うでしょ?
多分だけどそれは無理。
ちなみに、タイトル調べたりしててわかったことだけど作中でほのめかされている別事件もきちんと小説にあるみたいだ。
積ん読消費してから読もうと思う。
P.S. 今週のお題「読書の秋」にしてしまうか迷ったけどいい機会なのでエントリーしておきます。
そうそう、今更ながら本記事冒頭の話です。
フランス語でしてやられたってどういうんだろうって調べたやつを上に載せたわけですが、間違ってたら教えて。
参考にしたのはここ↓